上腕骨顆上骨折
上腕骨顆上骨折
上腕骨顆上骨折は肘関節外の骨折で小児に多い骨折
受傷原因:転倒、遊具からの転落、スノーボードなどのスポーツ外傷
診断:X線写真の2方向で判断されることが多い
治療:ずれがない場合はギプス固定を行うがずれがある場合は手術を行います
以下、詳細に説明
上腕骨顆上骨折と上腕骨通顆骨折の違い
両方ともに上腕骨の遠位端(下端)の骨折である
★上腕骨顆上骨折:関節外骨折(関節包の外側) 赤点線部分
★上腕骨通顆骨折:関節内骨折(関節包の内側)で
関節面に及ばないもの 青点線部分
受傷原因 (上腕骨顆上骨折)
遊具や脚立など高所からの転落、交通事故、
スノーボードなどのスポーツ外傷、
高齢者の場合は転倒が多い
症状
外観
・激しい腫れ、変形
ずれが激しい場合は
・皮下出血
・皮膚が窪むPucker sign(パッカーサイン)
-折れた骨のギザギザの端が皮膚に引っかかり皮膚がくぼむー
-小児に起こりやすい-
自覚症状
・激しい痛み、
・神経麻痺(橈骨神経麻痺、正中神経麻痺)
・手の冷感
など
合併損傷 小児では重篤な合併損傷が発生する危険があります。
・神経損傷
橈骨神経および正中神経の損傷に注意が必要です。
・血管損傷
上腕動脈が切れたり、引き伸ばされて内膜が損傷し、
血栓で血流が途絶えることがあります。
・コンパートメント症候群
骨折部が腫れて、それよりも遠位の静脈還流が減少し、
前腕筋のコンパートメント内圧が上がる状態です。
コンパートメント内圧の上昇を放置すると筋肉の壊死が起こり
ひいてはVolkmann拘縮に至る可能性があります。
注意!! 橈骨動脈が触れるからコンパートメント症候群は大丈夫と
判断しているアナタ!! それは間違いです。
コンパートメント内圧の上昇は
動脈の障害によっておこる阻血と
静脈の還流障害で起こるものがあり、
後者の場合は橈骨動脈が触れることが多い。
治療
ずれが少ない場合:ギプス等で固定し骨癒合後に肘のリハビリを行います
ずれが大きい場合:手術で骨のずれを戻して金属で骨折部を固定します
使用する金属 小児:金属製のピン、ワイヤーを用いて固定
成人:スクリュウ、プレート等を用いて固定
6歳男児 遊具から転落し受傷
受傷時X線 正面像
遠位骨片が尺側に転位しています
受傷時X線 側面像
背側に骨片が大きく転位しています
手術所見です。
術前に橈骨神経麻痺があり
パッカーサイン陽性、皮下出血があり骨折部を展開しました。
上腕骨骨折部に橈骨神経が引っかかり断裂寸前でした
術後2か月で神経が徐々に回復し、6か月で正常に戻りました。
6歳男児 自転車で転倒し受傷
受傷時X線 正面像
遠位骨片が尺側に転位しています
受傷時X線 側面像
側面でのずれはあまりありません
術後X線 正面像
ずれも矯正され、ピンで固定しました
術後X線 側面像
ずれも矯正されています
術後6週でピンを抜去しました。
10歳女児 スポーツで転倒し受傷
受傷時の右上肢
腫れが激しく上腕の皮膚が緊満している
受傷時X線 正面像
側方にずれ、さらに90度回旋している
受傷時X線 側面像
この時点で回旋は減少しており、
骨折部での激しい動揺性を
うかがわせる