モンテジア骨折
モンテジア骨折とは? 肘脱臼骨折のひとつ
1. モンテジア骨折 = 尺骨骨折 + 橈骨頭脱臼
ちなみに ガレアッチ骨折 = 橈骨骨折+尺骨頭脱臼
2. X線では尺骨骨折に目を奪われて橈骨頭脱臼を見逃しやすい
3. 治療は橈骨頭脱臼の整復と尺骨の整復固定を行います
4. 陳旧性モンテジア骨折(橈骨頭脱臼を見逃して尺骨が治癒した場合)は
尺骨矯正手術 ± 橈骨頭の靭帯再建手術を行います
症状
尺骨骨折による前腕の痛みと橈骨頭脱臼による肘の痛みが生じます。損傷部位が2か所あるからといって、それぞれの痛みの部位を明確に区別することは困難で、肘から腕の一つの痛みとして訴えることが多い印象です。橈骨頭の脱臼方向によっては橈骨神経が圧迫され橈骨神経麻痺を合併することがあります。
原因
小児の場合は鉄棒や遊具から転落して受傷することが多く、大人の場合は脚立などからの転落や、交通事故などで受傷することが多い骨折です。
分類
Bado分類:モンテジア骨折の分類は Bado分類が 有名です。
発生頻度:Type1> Type3> Type2> Type4
Bado,J.L: The Monteggia Lesion. Clin. Orthop., 50:1-86
治療
★徒手整復
橈骨神経麻痺の予防のためにできるだけ早期に脱臼を整復することが重要。
小児の場合は徒手整復で橈骨頭が整復できることがあります。
脱臼を整復後、関節に動揺性がなく尺骨のずれが少なければ
ギプス等で治療を行うことがあります。
★手術 多くの場合は手術が必要です。
新鮮例:尺骨のズレをなおし金属で固定します。
➢橈骨頭が自然に整復され動揺性がなければ腕橈関節はあけない。
➢橈骨頭が整復されない場合は腕橈関節を開けて整復し靭帯を縫合。
陳旧例:癒合している尺骨を切り、変形を過矯正して金属で固定します。
さらに橈骨頭を整復します。
「過矯正とは脱臼している橈骨頭を骨間膜を介して元の位置に
引っぱるために正常の形態よりも背側凸になるように
尺骨を曲げて固定します。」
➢さらに靭帯縫合、輪状靭帯の再建を行う場合もある。
##陳旧例の手術は手・肘関節の専門医が執刀する必要があります。
陳旧性モンテジア骨折の詳細
2020.10.3 追加
★正常の橈骨、尺骨、靭帯等
モンテジア骨折を理解するため正常の橈骨と尺骨、周囲の靭帯等について解説します
橈骨と尺骨が離れないようにいろいろな組織が関与しています。
特に①輪状靭帯と②骨間膜が重要です。
①輪状靭帯:橈骨頭を尺骨に押さえつけている靭帯です。
ハチマキあるいはヘッドロックのように尺骨に固定されています。
②骨間膜:橈骨と尺骨が離れないように両者をつないでいる膜があります。
一方
③上腕二頭筋腱:橈骨は上腕二頭筋腱によって絶えず上方(肘を曲げる方向)に引っぱられています。
したがって、輪状靭帯と骨間膜は上腕二頭筋腱の引っ張りに負けないように
正常に機能していなければなりません
★陳旧性モンテジア骨折の病態
モンテジア骨折後 橈骨頭が脱臼したまま長期間経過した状態です
①輪状靭帯の損傷:輪状靭帯が切れているかあるいは橈骨頭かすっぽりと抜けている状態です。
橈骨頭をヘッドロックのように抑え込むことができません
②骨間膜の緩み:骨間膜が緩み橈骨を尺骨側に引っぱることができません
#尺骨の短縮:骨折時に尺骨が短縮しているため橈骨が上腕にぶつかり整復が困難です。
★陳旧性モンテジア骨折の治療
A.尺骨の延長と過矯正:尺骨を延長し尺側凸(下の方)に曲げてプレートで固定します
尺骨を延長すると橈骨頭が整復されるスペースができます。
B. 骨間膜:尺骨の過矯正で骨間膜につながっている橈骨が尺骨方向に引っ張られて整復保持されます。
C. 輪状靭帯の修復:必要に応じて輪状靭帯を再建します。
治療症例
症例1
正面写真です。
尺骨が中央で折れています。転位が少ない骨折です。
橈骨頭は正常な位置に見えます。
側面写真です。
橈骨頭が脱臼し掌側に突出しています。
この症例は正面写真では橈骨頭が正常な位置にあり側面写真で脱臼が見つかった症例です。
症例2
側面写真です。
詳しくみると少し異常なところはありますが、脱臼していなさそうに見えます。
正面写真です。
橈骨頭が横に大きく離れています。
これだけ離れていても側面像ではほぼ正常に見えました。
正確な正面と側面の写真が必須です。
見逃さないように注意が必要です。
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