病名:舟状骨骨折
舟状骨とはどんな骨?
舟状骨は手首に8個ある手根骨のうちの一つです。手首の一番親指側の骨です。船のような形から舟状骨と名前が来ています。「しゅうじょうこつ」と読みます。 下の図を参照してください。
舟状骨は手首に8個ある手根骨のうちの一つです。親指の根本と橈骨の間にあります。
左図の斜線部分が舟状骨です。
◆原因
転倒などで手関節を背屈位で強くついた際に発生します。
◆症状
受傷直後は激しい腫れや皮下出血は見られません。
関節包(関節を包んでいる丈夫な袋)の中の骨折のため皮下に血液が出てこないからです。
⇒ そのため 捻挫と思い込み受傷後かなり経過してから受診する方が多い骨折です。
手首を動かしたときの運動痛が生じます。
圧痛は手関節の親指側のくぼみに強く認められます。
◆診断
受傷状況:手関節を背屈位で付いて受傷した。
症状:手関節の橈側(親指側)に運動痛があり、圧痛があること。
レントゲン:レントゲンで月状骨撮影を行い、骨折の有無をチェックします。
★この骨折はレントゲンには大変映りにくく、骨折の逃しも多い外傷です。
レントゲンで骨折が不明であっても、上記のような受傷状況と圧痛部位、運動痛があれば舟状骨骨折を疑い、シーネ固定をします。
正確な診断のためにCT, MRIを撮影することもあります。
舟状骨が中央で割れて内部の骨がすり減っているのがわかります。
骨折部は骨硬化(白くなっている部分)が見られ受傷から相当の時間が経過していることがわかります。
◆治療
ギプス固定:転位がない場合はギプス固定をします。
手術:転位がある場合や受傷後長期間経過して骨が癒合していない場合は手術をします。
・受傷直後は転位の程度に応じて手術方法が変わります。
#転位が軽度の場合:皮膚をほぼ切開せずに(経皮的に)舟状骨をネジで固定します。
#激しい転位の場合:皮膚を切開し転位を戻してネジで固定します。
・受傷後時間がたった場合は手術を行います。骨移植が必要です。
骨を移植しネジで止めております。
術後2ヶ月で骨癒合が得られ、仕事に復帰されてます。
陳旧例
大学生、スポーツで受傷し約2か月経過して受診されました。
受傷直後は捻挫と思い様子を見ていたようです。
舟状骨が骨折し約2か月経過しております。
CT写真
以下の問題点があります。
1,骨折部の骨吸収:特に内部の骨が消失し骨が欠損しています。
2,屈曲変形:骨折部で舟状骨が「くの字」に曲がっています。
このような状態ですと手術以外では骨癒合は望めません。
治療:舟状骨が癒合せずに放置されますと手関節の痛みや可動域の低下、筋力の低下等の障害が残ります。
特に若年者に起こった舟状骨骨折を放置するとその後の生活に支障をきたしますので早めの治療が必要です
手術で主に以下の点に注意し舟状骨をネジ等で固定します
1,骨移植:骨折部の骨欠損部に骨移植を行います。
2,「くの字」の矯正:曲がっている舟状骨を正常な位置に戻し固定します。
3,外固定:舟状骨骨折は骨癒合に時間がかかる外傷ですので、手術後ギプスや装具等で手関節を固定します。